白蘭樹下の背景。
香港クラフトジンの草分けである「白蘭樹下」。中華圏だけでなく国際的な主要スピリッツ競技会で、栄誉あるアワードを多数受賞しています。
独特な発展の歴史と文化遺産を持つ香港の地で誕生した「白蘭樹下」。これは、民族的には中国人ですが、広東語という言語、飲食、趣向やライフスタイルにいたるまで、英国を初めとする西洋と世界各地の多様な文化から影響を受けてきたことで、他に類をみない豊かな生活体験を育んだ、香港人そのもののようなジンなのです。
香港で生まれ育ったキット・チュン(張寅傑)は、「白蘭樹下」創造の原動力です。香港有数のミクソロジストとして18年以上にわたり、香港とヨーロッパ各地でバーテンダーとバーコンサルタントとして活躍してきました。彼が創り出すカクテルは、麗しさと美味しさの完璧なバランスを湛えており、華麗なカクテルメーキングの技術でも知られています。ヨーロッパから香港に戻った後、バーテンダー養成学校を創設。世界的に有名なカクテルを学生に教えながら、彼独自の手法も伝授しています。
もう一人の創業者であるジョセフ・チュン(張頴雋)も香港生まれの香港育ちで、「白蘭樹下」を明晰な頭脳で支えています。前職は集中治療・心臓治療専門の看護師で、法学部修士学位の持ち主でもありますが、キットのバーテンダー養成学校でカクテル作りの授業に参加したことをきっかけとして、キットと共にジン作りの道を歩むことになりました。
「酔っているときに言ったことは、素面のときにこそ実行してみるといい。そうすれば、余計なことは言わない方がいいって気づくだろう」
―アーネスト・ヘミングウェイ
キットとジョセフは、香港郊外の奥深いエリアに佇む、昔ながらの香港を思わせる青い瓦屋根の民家を、小さなアトリエに改築しました。当初は、アイデアを形にして友人と共有するための場所に過ぎませんでした。しかし試飲を繰り返し、幾晩も杯を酌み交わし語り合うにつれ、香港を代表するスピリッツを創りたいという強烈な思いが生まれたのです。時を経てこれがすでに歴史となった今、ヘミングウェイの言葉には反するけれども、あの日、酔いながら「余計な話」をたっぷりしておいて良かったと思うのです。